3asy to man!plate

もの書きの練習帳

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

いのち

全身の細胞が開いていく感覚を私は忘れない なにものにも追い越される時の、高揚感ともいえない胸の高鳴りも 金切り声をあげているのは血を分け合った兄弟たち あやすことも忘れて泣き疲れた産みの親たち 帰るところはあるのですかと唐突に聞かれた質問に対…

置いてけぼりの気持ち

なんにも変わっていないつもりだった 私もみんなも でもそれは気のせいで みんな少しずつ、でも急速に 変化していた 私はまったくそれに乗ることができなかった 置いてけぼりの気持ちは 悲しいというよりも もう何も感じずに、ただ静かに空虚な穴が 心に空い…

everyday

出て行くもの を 失いたくない 青いもの 黄色いもの 赤いもの 感覚だけが 確かなもの 鳥が鳴いている 木の上にとまっている黒いもの 空を覆う 物体 おりてくる 物体 あの向こう側には 何があるの 教えてくれるひとはいない 来るものを 拒みたくない なんでも…

帰宅

そとはもう暗いから家へかえろう 吐く息が白くなっている あなたの横顔 その輪郭をなぞる わたしがさしでがましくいったことばに 急に口を閉ざしたあなたは それから帰るまでの道のりは一言も発せず ただ足音だけが響いていた 早い歩調にあわせる遅い足音 い…

わたしはそうやって生まれたの

堕落者は言った あんたにあっておれにないものは何か そんなこと分からなかった 野蛮なものは相手にもしなかった ただひたすらな頑張りを私は繰り返していた 私は間違っていない 私は正しいのだ そうやって白く塗られた壁を私の周りに建てた 邪悪なものが侵…

糾弾

矢印を見つけなさいと軍服姿の男は言うのだけれど 私は何のことかさっぱりわからないでいる 青い空にはいつか穴があいて そこからは大きく偉大な強い光が直接地球に届く その後のことは覚えていないが結局は死に至る いい加減愛想尽きたと言い走り去った女も…

尿意がする

背中がかゆい おい、かいてくれないか? そうだ俺はひとりだと気がつく 冷たい風が吹く 外では木枯らしがなっている もう冬かと寂しく呟く 衣替えをする 冬物の懐かしい匂いがたちこめる 手編みのマフラーが出てくる お前の事を思い出す 不意に泣けてくる 先…