3asy to man!plate

もの書きの練習帳

2017-01-01から1年間の記事一覧

指先についたチョコレートの塊をずっと見ていると 体温で少しずつ溶けて行っては 垂れて行った先にあった小さな突起物に 針金を引っかけて思いっきり引っ張ると チョコレートの油分でするっと抜けて 勢いで向かいのテーブルに飛んでいった そうだそうだった…

あの時、私は静かに落ちていった

どうしてあの時、あなたは静かに泣いていたのか その涙の理由を知りたかった でも私にはそれを聞くことはできなかった そんな勇気もなく、聞こうとしても声など出なかった それくらいに、私は空っぽで阿呆だった 毛布に包まった二人の間には確実な何かがあっ…

冬がやってきた。

冬がやってきた。 暗闇のなかで、窓をたたきつける音が響く カーテンの向こう側にはどんな景色が広がっているのか 寒いから開けて確認しようなんて思わなかった 冷たい指と鼻先だけで冬の訪れは十分わかった 毛布の中の足をくねらせる 湯たんぽの缶ががたん…

わかったつもり

わかった! とか簡単に言うけれど わかったってなによ 何がわかったの みんな見えるものがちがうんでしょ それでなにがわかったのよ 一部だけ見てわかったなんて 全能じゃあるまい 世の中全部わかったつもりの幻想 でしかないの、わかった!

秋風

夕日が綺麗だと誘われた公園で レンズ越しに見つめ合う二人の間を 秋の風が通っていく 可愛いプードルが隣で糞をしている ジャージの女子高生が人口浜で戯れている 揺らめく工場地帯の向こうに 飛行機が消えていく 秋の空はどんな空よりもずっと遠い 「私を…

雫が垂れると、和紙には一つ染みができた。

腕が、手が、指先までもが、震えているのは何故だろう。 数分前の言いようもない優しさに包まれたような錯覚と、その後に脳裏に鳴り響くキーンという乾いた音。 全てがどす黒い大きな穴に吸い込まれていくような気がする。 本当は、「みんな嘘だ」と言って、…

冷静と情熱のあいだ。

分針が一つ進んだ。軽快に流れるポップミュージック。 同じ姿勢をずっとしていたから、軽く片足がしびれている。 さきほどは、SNS上での怒涛の会話があった。 文字とイラストだけで表現された会話。 そこにあなたの声を想像で付け足してみたりして。 本当は…

何を求めて、何に飢えているのか

メールの返信が遅くなった。ただそれだけのことに、何を憂いているのか。何をそこまで悲しんでいるのだろうか。 妄想は膨らむ一方で、自分を悲劇のヒロインに仕立て上げようと必死になり、悲劇のストーリーを頭の中で練りだしている。 「私のことを、それほ…

散文

頭の中のどこかに必ずある単語、それも、最近急上昇中の単語。 いつのまにそんなに私の中に流れ込んできたのか? 私が入ってくることを許したのか、それとも強行突破されたとしても、 今、あなたのことをこれほどまでに考えなければいけない ことになってい…

言葉にしなければ伝わらないけれど、言葉にしても、伝わらない。

二つの肉が分かりあうためには、何が必要だろう。 自分のなかから想いをとり出すことができない塊が互いに共鳴するためには、 音を震わせ、形をつくって、自分の外に(何かを)表現することでしか、 絶対に分かり合うことはできない。 一つが発した振動は、…

手放す準備を

始めなければいけない。 急速にたくさんのものを持ちすぎた。 早く、何かを落として、捨てて 行かなければずっとここに立ち止まったまま、 進めないから。 順序をつけて どういう基準で 何が大切か何がいらないのかなんて 急速に手に入れたものたちに優劣な…

お子様ロマンチック

いつまでロマンチック気取りをしているんだ だらだらと毎日を過ごしてここまでたどりついたんじゃないか 今更きれいにしようったって変わりはしないよ 経験はどんどん自分を甘やかして楽なほうへ楽なほうへと その結果があんたの姿なんじゃあないか そのだら…

私がやってきたことは

私がやってきたことは無意味だ これまで積み上げてきた数々の経験やらなんやら 何のためにここまでやってきたのか わからない わからないけれどそれなにり一生懸命やってきたつもり 何のためかもわからないのに がむしゃらに それが無駄になるかもしれないと…

皮をむくと そこから血が流れ 肉がはがれ 深く深く傷口が開いていく 細胞が引きちぎられ 肉片が落ち 血がとめどなくしたたっていく 行為をとめることができない どうしても止められない 皮をむくということは 自分を傷つけ 人を傷つけ 自分をどんどん孤独に…

広阪にて

なんとなく、少し歩きたい気分だったから、商店街を抜けて、路地を曲がって、 お堀を通って、広場まででてきた。空が広い。初夏の夕暮れ。斑模様の空。夕日。オレンジと紫。 あまりにもきれいで、きれいすぎて、なんだか泣けてきた。 理由はわからないけれど…