秋風
夕日が綺麗だと誘われた公園で
レンズ越しに見つめ合う二人の間を
秋の風が通っていく
可愛いプードルが隣で糞をしている
ジャージの女子高生が人口浜で戯れている
揺らめく工場地帯の向こうに
飛行機が消えていく
秋の空はどんな空よりもずっと遠い
「私をもっとずっと遠くへ連れて行ってください」と
声もなく目の奥で伝えようとしてみる
レンズをのぞくあなた
あなたは何を見ているのだろうか
何を見ようとしているのだろうか
静かな水面に波を立てるカモの家族たち
蛍光色を好んで纏うランナーたち
秋の風は夜を早く連れてきてしまうから
そんなことを考えていると、あなたの背中はますます遠くなる