糾弾
矢印を見つけなさいと軍服姿の男は言うのだけれど
私は何のことかさっぱりわからないでいる
青い空にはいつか穴があいて
そこからは大きく偉大な強い光が直接地球に届く
その後のことは覚えていないが結局は死に至る
いい加減愛想尽きたと言い走り去った女も
汚れたワンピースと笑顔で家に戻ってきた
得たものは計り知れないおろかさだと笑い
液晶の漏れた画面に釘付けになるよりは
腐った森に出かけて木の皮を剥がすほうがましだとも言った
黒い色を塗った缶に蓋をして もう見られないように蓋をして
知らない土地に深く埋める
掘り起こされぬように深く埋める
偉人なんてこの世にはいなくて
いるのはただの批評家と批評を求め飢えている作家だけだと連呼しながら
矢印はまだ見つからなかった
埋めた缶を掘り起こしたはずなのに見つからなかった
それでも軍服姿の男は微笑ましく言ったのだ
「あなたは黒い色より白い色の方がお似合いだ。
腐った森の木の皮を剥がすより、どうだね、家で詩でも書かないか」
掘り起こせなかったのは嘘で、掘り起こそうとしなかったのが事実で
ずっと耳を塞いで目を閉じてしゃがんだまま矢印を思い出す
まだあの軍服姿の男が目の前にいることを知りながら
(2007.10.27)